入院患者の口腔ケア

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コラム

入院患者の口腔ケア

日本は超高齢化社会を迎え、医療現場でも構造変化が起こり、病院、施設、看護や介護の現場で求められる医療は高度化、多様化しています。高齢者のQOL(生活の質)維持のためには、楽しく安全で美味しい食事ができることが欠かせない条件となっています。そのためには歯科疾患の予防、口腔機能の維持がたいへん重要です。継続的な口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎や低栄養を予防できると報告されています。今回は、病院や施設、看護・介護の現場でも口腔ケアが重要視されていることについて、ご紹介します。  

患者への口腔ケアの必要性

高齢化社会の到来により、肺炎で亡くなる高齢者が急増し、肺炎が脳血管疾患を上回って日本人の死因の第3位となっています。そして高齢者肺炎の7~8割は誤嚥性肺炎だといわれています。口腔内の状態が悪化し、誤嚥性肺炎のリスクが増していることが、近年大きな問題となっています。誤嚥性肺炎の起因菌には、口腔内細菌が関与していると指摘されています。高齢者の場合は時に死因となるばかりでなく、寝たきりの原因となったり、機能回復を妨げたり遅延させる元凶となっています。主な原因としては、「嚥下反射や咳反射の低下による嚥下」、「免疫力の低下」、「口腔内細菌の増殖」などがあります。これらは加齢や疾病に伴う避けられない現象のひとつと考えられ、現実的な対処方法として、誤嚥性肺炎の予防には有効な口腔ケアに力を入れることが大切です。  

入院患者にみられる口の中の問題

脳卒中や骨折、肺炎などの病気やけがで入院した患者さんは治療後に、リハビリテーションや療養のための病院に移ります。そこでは腕や脚を動かす筋力を回復させ、日常生活に戻るための訓練を行います。ただ、このような入院患者さんの多くは高齢で、「歯が欠けている、入れ歯が合わない、口の中が汚れている、飲み込み難い」など、歯や口の周辺にトラブルを抱えています。うまく噛めなかったり、飲み込めなかったりして栄養不足となり、リハビリ効果が半減してしまいます。うまく飲み込めずに、肺炎になる場合もあります。  

患者への口腔ケア時の注意点

口腔ケアを行う時に誤嚥させないことが最も重要ですから、的確な吸引と明視野の確保が大切です。   吸引が大切 病院ではベッドサイドに吸引器(吸痰用のカテーテル)がありますが、吸引力が弱い上、操作性が悪いので、口腔内の汚れや細菌をピンポイントで吸引することは難しいです。そこで勧められるのが、歯科用の吸引器に金属製の吸引嘴管(しかん:ノズル)を取り付けて吸引する方法です。持ち運びができる吸引器ですが、強力な吸引力で口腔内の汚れや細菌を口腔内に拡散させずに、素早く口腔外へ除去することができます。   明視野の確保 口腔内は複雑な構造のため、歯や口唇等によって影ができ易くなっています。特に、病院などでの口腔ケアでは、姿勢や視野に制限されることが多く、ケア施工者がその対応に苦慮します。国立長寿医療研究センターでは、口腔内の問題を見落とさずに口腔ケアを効率よく進めるために、ヘッドライトと口角鈎(こうかくこう:口唇排除用フック)を使っています。口角鈎を装着すると、口唇の口角部を左右に開けるので視野を広げられ、ヘッドライトで隅々まで口腔内を照らすことができます。センターで使用されるヘッドライトは、頭部に固定され明視野を確保し易くなっており、両手が自由に使えて、緊急時の早急な対応が可能です。  

誤嚥予防の新しい口腔ケア方法

口腔ケアを行っている病院などでは、汚染物を口腔外へ排出するのに水を使っています。しかし、口腔ケアを必要とする患者さんは、嚥下反射や咳反射、口腔機能の低下により、自分では口腔内の水分を排出できない方がほとんどです。そのような患者さんの口腔内に、口腔ケアで使用した水が残ってしまった場合には、水が喉の奥に流れても気づかない不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)を引き起す可能性があります。すなわちこれによって、誤嚥性肺炎を引き起こす場合もあるということです。医療・看護の現場で効率的かつ効率的に口腔ケアを実現するには、専門的口腔ケアのできる歯科医師・歯科衛生士の介入が不可欠です。そのために求められるのは、誤嚥リスクが少なく、「口腔衛生」と「口腔機能」を守る正しい口腔ケアを提供することです。国立長寿医療研究センターでは、鶴見大学が提唱した口腔湿潤剤を用いた口腔ケア手法を発展させ、誤嚥性肺炎予防のために洗浄水を用いない口腔ケア手技と専用ジェルの開発を行っています。   国立長寿医療研究センターの手技 スポンジブラシで保湿ジェルを口腔内全体に塗布し、乾燥した口腔内の汚れを十分に軟化させます。その後、吸引嘴管と歯ブラシを持ってブラッシングを行い、保湿ジェルと共に絡め取ったプラークなどの汚染物を吸引嘴管を用いて口腔外へ吸い出します。このように水で洗浄するのではなく、ジェルで絡め取って吸引嘴管で素早く口腔外へ排出することで、咽頭へのたれ込みを予防することができます。     いかがでしたか、口の状態が悪い要因には日頃のケア不足が挙げられます。定期的な歯科の受診はとても大切です。寝たきりで外出が難しい場合は訪問歯科診療を利用するようにしてください。  

監修者情報

公開日:2023年07月10日

理事長

理事長 松岡 伸輔

芦屋M&S歯科・矯正クリニックのWebサイトにようこそお越しくださいました。
平成15年の開設以来、芦屋市周辺の皆様のお口の健康維持のために日々診療しています。

当院は虫歯や歯周病治療などの一般歯科をはじめ、インプラント治療や入れ歯治療など歯科全般に対応します。
なかでも得意としているのは矯正歯科です。日本矯正歯科協会に所属する矯正歯科の専門医が小児矯正にも成人矯正にも対応し、インビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置)認定ドクターも在籍しています。
専門的な矯正歯科と一般歯科を並行してご提供して、総合的な口腔ケアをおこなう歯科医院です。
院内は衛生管理の徹底により安心して診療を受けていただけます。そして患者様目線を大切に、家族を診ているような丁寧で痛みをできるだけ抑えた治療をご提供します。
予防にも力を入れ、長い目で見たお口全体の健康維持をサポートしますので、気になることは何でもお気軽にご相談ください。